サキュバスの晩餐

sakyunの日記

庭先で音がする

先日、回収してきたママチャリのパンクを修理する音がしている。
震災で壊れたアスファルトに乗り上げたときにタイヤがはぜたとの話だった。
夜明け前の暗い道だったから 道に鋭く「とんがり」ができていたのに気がつかなかったとか。だいたい寝ないで自転車をこきつづけるなんて...むちゃくちゃだ。

パンクした自転車が放置された場所は 3月に津波が押し寄せた場所だった。大津波なんぞ幻だったかのようにに よく片付けられて駐車場はきれいに広々としていた。いくつもの四角ばった形の大型店達はたくさんの商品を並べて営業していた。マイカーに乗った客達がわらわらと 角砂糖に集まるありんこのように集まってくる。ブランドショップがつまったショッピングモールの入り口に 買い物を楽しみに目を輝かせたキラキラしたご婦人達が夫と子供を従えて早足で吸い込まれて行く。
目で見える景色は たぶん 震災前と変わりないような気がした。
だが...一帯の空気に 匂いがした。

海沿いの通学路を歩き続けたことのあるわたしでも、穏やかな入り江にも、しけて大荒れの海でも、台風後の砂浜ですら、こんなえもいわれぬいやな匂いは記憶がない。潮溜まりのにおいでもなければ、磯の香りとも違う。塩まじりの泥の臭さだ。臭いといっても 家庭排水や下水が整備される前ならどこでもしていたドブのにおいとも違う。汚れの種類が一定していない感じがした。捨てられるべくして捨てられたものの放つ悪臭とは異なる。
辺りを見回す。
どこにもにおいの元になりそうな汚れたものは見えないからにおってくるはずがない!
でも やはり、どこからともなく汚れた泥のにおいが漂っていた。
津波が運んだえぐり取られた海底の...そして...考え始めそうになり考えるのを止めた。