通りすがりの黄色い占い師
あの時、私は女子高生だった。
函館駅から地元駅まで鈍行列車片道40分、埃っぽい匂いのする紺色のボックス席に座って、宿題のプリントを膝の上に乗せたカバンを机代わりに解いていた。
ひょいと向かいの席にタンポポみたいな眩しい黄色のジャンバーを着たお兄さんが座った。そして彼はプリントに書かれた私の名前を見るとふむふむいい名前だねと言い始めた。何を言い出すのかしらこの人はと私は顔を上げた。タンポポのように朗らかな彼は
そうだねこの名前はすごくいい、たとえどんなに難しくて無理だろうと思えた学校でも合格できるだろう、ただね女としてはねどうかな強すぎるんだな、でもいい名前だよ、ああ僕は占い師なんだ、と言って軽やかに笑った。
何を言っているのかしらこの人は、と内心思った。
今思い返すと、あれは本当のことだった。
女としては、幸せではなかった。実際のところ定型的な女の幸福からははるか遠ざかった生き方になった。いつしかそういう成り行きも仕方ないと諦めた。少女の頃に夢見ていた物語のヒロインがたどる結末王子と末長く幸せに暮らしましたのページの端切れすら吹きすさぶ歳月の大雨に打たれて紙の繊維が千切れて溶けて手の内に何一つとして残らないままに年を取ってしまった事実に震え上がる。
女としては真っ当な幸せを成し遂げられなかったけれど、それよりもなすべきことは他にある。生きている限りもっとやれるはず、だから諦めない。