サキュバスの晩餐

sakyunの日記

年初めの行事といえば

いつもは初詣。連れ合いがいた時期は、袋井の可睡斎に一緒に出かけ
何かを祈って詣で、おみくじをひいた。
大吉が出た年もあった。
その年 子供を身ごもった。しかし、あっというまにあっけなく
日の目を見ずに消えた命になった。
不可抗力だ、運命だとは考えても、あったはずのなにかが体の中から
消えたという欠落感は 体の組織が悲しみの体液にどっぷり浸かって
しまったようで救いがたいものだった。
共に悲しみを受け止めてくれる人はいなかった。
一人で暗い寝室に横たわり動かずにじっと耐えているよりなかった。
結婚がうまくいかなくなりはじめたポイントはあの時だったのだろう。
体調不良を理由に5日間休んだあと 私は仕事を辞めさせれられた。
総務課長に 婦人科入院の情報は掴んでいるが他の人には言わないで
あげるからね、と、ニヤつきながら、退職を迫られた。
情報をたれ流す病院スタッフも糞だが、それ以上にその職場
が糞だとわかった。糞溜まりは去るに限る。退職は承諾した。
大吉の出る年なんてろくなもんじゃない、と思った。




今年は おみくじをひいていない。
歴史ある由緒正しき神社だときいて出かけたら、がらんとして誰もいなかった。
前日についたとおぼしき足跡がいくつか 石段のうえの雪に残されているだけだ。
小銭が数個だけ入っているのが丸見えのスカスカの賽銭箱に これまたほんの
気持ちだけの小銭を入れて 鈴を鳴らして柏手を打った。
おみくじは売っていなかった。おみくじを結ぶ竿台は置かれてあったが
なにも結ばれていなかった。竿の間を北風が吹き抜ける。
そんなふうにひんやりと静かに わたしの一年は はじまった。