サキュバスの晩餐

sakyunの日記

イルミネーション

冷たい夜の空気に ダイオードの光は冴えて
まだ11月だというのに クリスマスイルミネーション。
人はさざめき 歩く。
歩道を流れる人の川。

なぜ ここまで来てしまったのだろう。
なにを 期待していたのだろう。

息を切らして辿り着いた駅のフロアには
ひさしぶりに やっと会えた大好きな恋人ではなく
ただ帰り時間を気にする他人の父親がいた。
家で待つ妻子を気にかけて目が泳ぎ
困惑顔で両手に家族への土産を抱え立っていた。

寂しいな。
一人でいる時よりも ずっと。

始まりから終わっていて
愛があるようでない
恋のつもり つもり つもり
雪が積もる北から戻ってきた男は
ただの単身赴任先から戻ってきた
子煩悩なお父さんに戻っていた

本当は 始めからなにもない
寂しいな 
やっぱりひとりぼっち

薄汚れた泥棒猫は野良猫
一匹 真冬の路地裏で野垂れ死ぬ