サキュバスの晩餐

sakyunの日記

立場上、外に向けて言葉を発するならば

がんばりなさい、まじめに努力しなさい、努力は報われるのだと、説得と励ましを続けていた。
だが、そういっている私自身は どこか虚しさを感じていた。

どんなにがんばったところで、死ぬ時は死ぬんだぜ、と、
穴だらけの肺のCT画像を振り回してシニカルな自嘲心がせせら笑い、
いままでがんばってこなかったわけでもないだろうに
なぜこんなにも苦しんでいるのだと、陰鬱な呻きをあげて貧者が胸の内から爪を立てる。
心の裏の陰りが 相手に伝わっていないことを願いながら 口ではがんばれ、努力を続けよと繰り返す。

嘘はついてはいけません、正直であれ、と、言葉にしながら
どれほど わたしには誰にも打ち明けられないことが多すぎるかを思う。

熱いコーヒーをいれて、マグカップの端に唇をつけて 芳香を胸いっぱいに吸い込んだ。
もうすぐ 冬が来る。